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国税庁が相続税調査にAIを活用(相続税調査)
2025.06.26
かつては富裕層だけのものと思われていた相続税ですが、平成27年に相続税の基礎控除額が大幅に引き下げられてからは、亡くなる人の約1割が相続税の課税対象になり、今では身近な税金となっています。
相続税の申告者数が急増したことに伴い、その申告内容をチェックする税務署では人手不足が大きな問題となり、税務調査が追い付かない状況となっています。
こうした中、国税庁は2025年7月から相続税の税務調査においてもAI(人工知能)を活用した新たな体制の導入を決定しました。
今回は、相続税調査におけるAI活用の実態をご紹介します。
相続税の申告と税務調査の現状
国税庁の発表によりますと、令和5年の被相続人数(死亡者数)は約157.6万人で、うち相続税の申告があった被相続人は約15.5万人、相続税を納税した相続人の総数としては約33.9万人でした。
一年間で15.5万件(納税者数33.9万人)に及ぶ相続税の申告内容を、税務署と国税局の限られた人数でそのすべてを調査することはもはや不可能な状況です。
実際、令和5事務年度で実施された相続税の税務調査(実地調査)は全国で8,556件でした。15万件超の申告の中から実地調査が行われた件数は約8千件ですので、その割合は僅か5~6%です。
その5~6%の調査対象者をどのように選定するかは税務当局にとっては重要なポイントになります。
所得税や法人税であれば毎年継続的に申告がありますので、極端に言いますと調査の機会は何度でもあります。しかし、相続税の申告は一回限りのため、タイミングを逃してしまうと税務調査の機会が失われてしまいます。
これまでの税務調査の対象の選定は、ベテラン調査官の「勘」と「経験」がすべてと言っても過言ではありませんでした。
しかし、申告数が年々増加するなかで、調査が必要な申告事案をすべて洗い出すには限界があります。
そこで導入されることになったのが「AIの活用」なのです。
2025年7月からAI相続税調査がスタート
国税庁は、現在は人が行っている調査先の選定業務の大半をAI(人工知能)に移行する方針を示しており、税務署の人手不足解消のため、調査先の選定はAIが行い、実地調査は人が行うというように役割分担の明確化を明らかにしました。
そして、2025年7月から全国の税務署でAIを導入することが発表されました。
2025年は団塊の世代がすべて75歳以上になる年で、相続件数も大幅に増えていくと見込まれています。
なお、2025事務年度(2025年7月~2026年6月の1年間)でAIでの分析対象となるのは2023年に発生した相続事案が中心になるとのことです。
AIで相続税調査の狙いを絞る
具体的には、相続税の申告書や一定規模以上の資産を持つ人が提出する財産債務調書、海外送受金を記録した調書、生命保険金の支払調書、金地金を売却した際の支払調書などを国税庁に集約しAIで分析します。過去に相続税で申告漏れなどが生じた事案から不正や申告ミスが生じる傾向を見つけ出し、AI分析のためのデータとして活用します。
そのうえで、被相続人及び相続人等(申告納税者)の過去の税務履歴や脱税歴、申告漏れ内容などと照らし合わせて、AIが「税務リスクスコア」を算出します。このスコアは0~1の範囲で、0.01以下の細かさで評価されます。
1が最もリスクが高く、自宅などで実地調査を行う優先順位が高い対象となります。分析作業は国税庁が行い、最終的には各地の国税局や税務署の担当者が対象者を選定するという流れです。
今まではこの判断を人が行っており、実地調査が行われた割合も僅か5~6%に過ぎませんでした。これがAIを活用することで過去の不正手口や申告ミスなどのパターンの統計データを照合しやすくし、より効率的で的確な選定作業を実現しようというのが国税庁の考えなのです。
いかがでしょうか。
AIの導入により、相続税の税務調査はより効率的になることが予想されます。そして、調査先の選定作業をAIが行うことで調査官等には時間的余裕がうまれ、その時間を実地調査に充てる動きになるでしょう。
しかし、これは決して税務調査が厳しくなるということではありません。AIの導入は、税務調査の公平性を高め、適正な申告・納税を促すための取り組みです。
私たちは、相続税に関する正しい知識を身につけ、制度の改正にも注意を払い、適正な申告を行えばまったく恐れるものではありません。
相続税申告にご心配やご不安がある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。
以上、今後の参考になれば幸いです。
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