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法人の青色欠損金の繰戻し還付──「調査が怖い」は誤解? 正しく準備して制度を活用しよう
2025.05.12
法人税の節税策の中でも、見落とされがちなのが「青色欠損金の繰戻し還付」です。
この制度、実はうまく使えば直近で支払った法人税が戻ってくる可能性があります。
「でも、還付請求をすると税務調査が来るんじゃ……」と二の足を踏んでいる経営者の方も多いのではないでしょうか?
今回は、法人がこの制度を活用する際のポイント、よくある誤解、そして調査を想定した適切な備え方について解説します。
1. 欠損金とは?──“期限がある資産”としての理解を
「欠損金」とは、法人が損失(赤字)を出した年に生じるマイナスの所得です。
青色申告をしている法人であれば、この欠損金は翌年以降10年間にわたり、黒字と相殺(繰越控除)することが可能です。
しかし注意点として、繰越控除は10年が期限。使い切らないと“消える資産”になります。
したがって、将来黒字が見込めない状況や、早期の資金回収が必要な場合には、「繰戻し還付」を検討すべきです。
2. 繰戻し還付とは──法人税を“取り戻す”制度
欠損金の「繰戻し還付」は、簡単に言うと、当期(赤字)に生じた損失を、前期(黒字)に“遡って”適用することで、支払った法人税の還付を受ける制度です。
たとえば、
- 令和6年度に利益が出て法人税を納付
- 令和7年度は赤字
という状況なら、令和7年度の欠損金を令和6年度に適用して、令和6年度分の法人税の還付を受けることができます。
3. 「税務調査が来る」噂の真相
「繰戻し還付を請求すると税務調査が入る」という話はよく聞かれます。
この根拠になっているのが、法人税法第80条第10項です。
法人税法 第80条第10項
税務署長は、前項の還付請求書の提出があった場合には、その請求の基礎となった欠損金額その他必要な事項について調査し、その調査したところにより、その請求をした内国法人に対し、その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、又は請求の理由がない旨を書面により通知する。
このように、還付請求を提出した場合は、調査したうえで還付することが前提の制度であることは事実です。しかし、実際上は通常の税務調査のようになる場合もあれば、書類調査と電話質問により赤字となった原因の確認で終わる場合もあります。
以下のようなケースは、本格的な税務調査対象になりやすいと思われます。
- 赤字の理由が不明確
- 費用計上が突発的または高額
- 会計帳簿の整備状況に疑義あり
逆に、赤字になった理由が明確であれば、全く何もなく還付されるケースもあります。
例えば、役員が退職して退職金を払った、固定資産を売却して大きく損失が出た、など、臨時的な事情で損失が出ている場合は理由が明確です。
4. 調査を避けるのではなく、“想定して備える”
重要なのは、「調査を恐れて申請しない」ことではなく、「調査が来ても問題ない状態」を作ることです。
調査はあくまで確認行為であり、不正や過失がなければ過度に怖れる必要はありません。むしろ、制度を正しく活用して還付を受けることは、経営上の正当な権利です。
5. 還付請求に向けた3つの準備
1)帳簿と証憑の整備
青色申告をしている法人であれば、帳簿の整備義務があります。
しかし、「青色申告=帳簿が完璧」ではありません。
帳簿、仕訳、請求書、領収書、契約書、通帳コピーなど、数字の裏付けが取れる状態にしておくことが大切です。
2)赤字の根拠説明の準備
「なぜ当期に赤字が発生したのか」を説明できるようにしておきましょう。
- 売上減少の理由(取引先減少、外部要因など)
- 特別損失の内容と必要性(固定資産除却、棚卸減耗など)
- 費用増加の背景
これらを合理的に説明できれば、税務署の納得度は大きく上がります。
3)顧問税理士との連携
繰戻し還付申請は、形式的な処理だけでなく、申告書作成の背景や資料説明が重要です。顧問税理士と十分に打ち合わせし、必要な書類や説明を整えましょう。
6. 制度を恐れず、使いこなす姿勢を
欠損金の繰戻し還付は、適切な会計処理と記録に基づいて行えば、税務署からも疑義を持たれにくい制度です。
申請をためらう必要はありません。ただし、「正しく、堂々と」申請すること。これが最大の防御です。
まとめ
- 欠損金は繰越だけでなく、繰戻して還付を受けられる
- 還付請求は調査の対象になりやすいが、必ず調査があるわけではない
- 帳簿と証拠の整備、赤字の根拠説明、税理士との連携がカギ
- 制度を恐れるのではなく、正しい理解と準備で活用するべき
使える制度は正しく使い、法人のキャッシュフロー改善に役立てましょう。
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