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従業員等への慰安目的の宴会費用は福利厚生費か交際費か?(法人税調査)

2023.07.31

従業員等への慰安目的の宴会費用は福利厚生費か交際費か?(法人税調査)

企業が従業員等の慰安を目的として開催する会食や旅行、イベントなどの費用を法人が負担した場合、通常は「福利厚生費」として損金処理することが可能です。

今回は、従業員等を対象とした宴会費用(一人当たり約2万8,000円)が税務調査で交際費と判断され追徴課税されたことに対し、納税者が裁判で争って課税処分の取り消しを勝ち取った事案をご紹介いたします。(平成29年4月25日福岡地裁判決)

事案の概要

今回の事案の概要は以下の通りとなります。

  • 食料品販売業を営むA社は、資本金6億円、従業員数1,185人、九州に7事業所を保有する株式会社である。
  • 平成20年3月期から平成25年3月期の法人税に関して、従業員等に対する「感謝の集い」と名付けた行事の費用の一部を福利厚生費として損金の額に算入した上で確定申告をした。
  • 「感謝の集い」に要した費用は毎年2,000万円超で、1人当たりの金額は2万8,000円程度、高級ホテルでのコース料理と著名な歌手等によるコンサートなどが行われていた。
  • 熊本国税局調査課による税務調査が行われ、上記費用について「交際費」に該当するとして損金否認、法人税の更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分がされた。
  • A社は国税不服審判所に対して処分取消しの審査請求をしたが棄却されたため、福岡地方裁判所に訴訟を提訴した。

従業員等への宴会費用は、交際費であるという国税の主張

従業員等への宴会費用は、交際費であるという国税の主張

本件に関する国税の主張は次の通りです。

  • 本件行事は、A社及び協力会社等の全従業員を対象としており、これらの従業員は「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等」に該当することから、「交際費等」に該当する支出の相手方となる。
  • また、本件行事は、参加者の慰安を目的として飲食の提供及びコンサート鑑賞を行ったものであるから、「交際費等」に該当する要件を満たしている。
  • 本件行事の開催場所が著名なホテルの大宴会場であり、一人当たり1万2,000円の午餐の他にアルコール等の飲物が提供され、著名な歌手等によるコンサートが催されるなど大きな規模で行われたものであり、支出総額は、おおよそ2,100万円ないし2,700万円と高額であり、参加者一人当たりの費用としてもおおよそ2万2,000円ないし2万8,000円に上る。
  • そして、この金額が、平日の昼の時間帯で比較的短い時間で行われた慰安行事に費やされた額としては極めて高額であることは明らかである。
  • 本件行事は、法人が費用を負担して行う社会一般的な福利厚生事業の程度を著しく超えているといわざるを得ない。従って、本件行事に係る費用は、「交際費等」から除かれる福利厚生費には該当せず、「交際費等」に該当するというべきである。

従業員等への宴会費用は、福利厚生費であるという納税者の主張

一方の納税者の主張は次の通りです。

  • 全従業員を対象とした慰安目的の行事に係る費用は、福利厚生費に該当し、「通常要する費用」であるか否かを問わず、そもそも「交際費等」には該当しない。
  • 措置法通達61の4(1)-1においても「福利厚生費」は交際費等には含まれないものとされており、福利厚生費が「通常要する費用」を超える場合を除くとは規定されていない。このような通達の規定からも、福利厚生費は、費用の多寡にかかわらず、「交際費等」には含まれないというべきである。
  • ちなみに、「通常要する費用」の範囲内か否かについては、行事の規模、開催の場所、参加者の構成、飲食等の内容、一人当たりの費用額、会社の規模を判断要素として判断すべきであり、実際の支出の目的達成とは無関係に、抽象的一般的に判断すべきではない。
  • 本件行事については、その目的が全従業員に対して感謝の意を表するとともに、労働意欲の向上を図ることなどにあって、1,000人を超える従業員全員を一堂に集める必要があること、工場での操業を2日以上停止させることはできないことなどに照らせば、上記判断要素のどの点についても「通常要する費用」の範囲に含まれるというべきである。
  • したがって、本件行事の費用は福利厚生費に該当し、「交際費等」には該当しないというべきである。

裁判所の判断

裁判所の判断

両者の主張を聴取し、事実関係を調査した福岡地裁は次のように判断しました。

  • 本件行事は、A社及び協力会社等の従業員全員を対象とし、A社代表者が従業員に対する感謝の意を表し、従業員の労働意欲を向上させるために、他の従業員との歓談や交流の機会を提供するものであり、「専ら従業員の慰安のために行われる」ものといえる。
  • 本件行事は、全従業員が一堂に会し、特別なコース料理を共に味わい、ライブコンサートを楽しむという非日常的な内容を含むものであって、従業員全員を対象とする「日帰り慰安旅行」であったといえる。
  • また、A社の事業状況や従業員の女性比率の高さ等に照らせば、A社の事業に支障を来すことなく、可能な限り全員参加が可能な慰安旅行の日程を考えると、A社においては、宿泊を伴う旅行は現実的ではなく、日帰り旅行にせざるを得ない状況にあったといえる。
  • そして、本件行事の目的から、A社の従業員全員(1,000人程)が一堂に会することが必要であったといえ、同程度の人員を収容できる会場でA社に近い会場としては、本件ホテルのみであったことから、本件行事の開催場所を本件ホテルとしたことは、やむを得ないことであったものと認められる。
  • 参加者一人当たりの費用は2万8,000円程度であるところ、本件行事の会場及び内容等とともに、年1回、従業員の移動時間を含めると約8時間から約11時間を掛けて行われる行事であることに照らせば、通常要する費用額を超えるものとは認め難い。
  • 本件行事は、「日帰り慰安旅行」というべきものであるところ、長崎界隈での「日帰り慰安旅行」に係る一人当たりの費用は2万6,000円程度と認められるので、この費用額と比較すれば、本件行事に係る一人当たりの費用は、「日帰り慰安旅行」に係る費用として通常要する程度であるというべきである。
  • 本件行事への従業員の参加率は、各事業年度とも70%を超えており、A社の業績の推移及び本件行事に対する従業員の受け止め方等によれば、本件行事は、従業員の更なる労働意欲の向上、一体感や忠誠心の醸成等の目的を十分に達成しており、その成果がA社の業績にも反映されているものと認められる。
  • 従って、本件行事の費用は「交際費等」に該当するということは困難である。

宴会費用が高額であっても福利厚生費とされる場合の判断基準

いかがでしょうか。
裁判所は、原告(A社)が「感謝の集い」を開催するようになった経緯や目的を認定し、さらに1,000人規模の従業員が一堂に会する必要があったこと、従業員の女性比率が高いために宿泊を伴う行事では参加が限られること、さらに従業員の行事に対する受け止め方など、詳細な事実を認定し、このような事情に照らして、国税の主張を排斥しました。
本件は、宴会費用が高額であることだけをもって、「通常要する費用」を超えると認定することはできないことを判断した事例といえます。

「福利厚生費」や「支払手数料」などの交際費の隣接科目は税務調査でチェックされやすいポイントです。
交際費を疑われそうな支払いに関しては、交際費ではないと主張できるよう、しっかりと説明資料も準備しておきましょう。

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