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相手方を明示しないビール券の提供は使途秘匿金になるか

2017.01.18

今回は、会社がビール券を贈答用として購入した際に、相手方の氏名等を帳簿書類に記載していなかったことが「使途秘匿金」としての支出に当たるか否かが争われた事案をご紹介します。(平成15年6月19日裁決)

事案の内容

事案の内容は次の通りです。

  • 平成11年3月期、平成12年3月期、平成13年3月期の各期において、法人A社は商品券・ビール券を購入し、交際費の額に計上して法人税等の申告を行った。
  • A社は、上記商品券等の引渡しの相手方の氏名等を帳簿書類に記載していなかった。
  • 税務調査が行われ、商品券等の引渡しの相手方の氏名等が帳簿書類に記載していないため、商品券の購入金額は「使途秘匿金」の支出に当たるとして、税務署は当該金額の100分の40に相当する税額を加算する更正処分を行った。
  • A社は、税務署の処分を不服として平成14年6月、審査請求を行った。

税務署の見解

税務署の見解は次の通りです。

  • A社が贈答したとする相手方の氏名等がA社の提示した帳簿書類に記載がなく、その使途を明らかにする帳簿、証憑等の提示もなく、その使途が不明である。
  • 調査担当職員が再三にわたりA社に対して帳簿あるいは証憑等を提示するなどしてその贈答先及び在庫の状況等を明らかにするよう求めたが、A社はこれに応じなかった。
  • A社において商品券等の引渡先を明らかにしないことから、その使途が明らかでなく、相手方も相当の理由がなくA社の帳簿書類に記載されていないので、「使途秘匿金」の支出に該当する。
  • 配送を依頼した株式会社H社の「ご進物申込票」は平成13年6月25日申込み分であって、本件処分の時期とは関係がなく、また、当該提出資料のうち、調査当職員に提示されたのは請求書の1枚目から4枚目までであり、当該資料だけではビール券を購入した事実は推認されるものの、その引渡しの相手方及び目的が不明である。
  • 各支出については、商品券等の購入の事実が推認されるのみで、引渡しの事実及びその目的並びに相手方が明らかにされておらず、そもそも、A社の交際費等であるのか否かさえ判断できないから、本件各支出をA社の交際費等であると認めることはできない。

納税者の主張

一方の納税者(A社)の主張は次の通りです。

  • 本件商品券等は、食品詰め合わせ、石鹸などの中元・歳暮用品とともに、H社で購入し同社から直接配送されているものであり、配送を委託する際に作成するH社の「ご進物申込票」又は同社からの請求書により、その配送先が判明するか又は配送された事実を推認することができるので、贈答品として使用されたことは明らかである。
  • 本件商品券等の引渡しの相手方の氏名等を帳簿書類に記載しなかったのは、過去の税務調査においても指摘がなく、商品券等の引渡しが使途秘匿金の支出に当たるとの認識がなかったからである。
  • 過去の「ご進物申込票」の控を保管していないのは、贈答時期になると、H社から前回及び前々回の贈答事績が印字された最新の「ご進物申込票」が送付され、これを保管すれば贈答の用が足りるからであり、配送先の氏名等を秘匿するためではない。
  • A社は交際費の支出を極力抑制しており、その額も同業他社と比較して決して過剰なものでもなく、本件商品券等の引渡しが不公正な取引を伴うものでもない。
  • さらに、配送したビール券は、金額に換算すると3,300円ないし4,400円程度のものであり、このような少額儀礼的に使用したビール券については、その引渡しの相手方の氏名等が帳簿書類に記載されていないことについて、措置法第62条第2項の「相当な理由」があると認められる。
  • 従って、立法趣旨に照らしてみても、A社がした本件商品券等の引渡しは、使途秘匿金の支出に当たるとは到底考えられない。

国税不服審判所の判断

最終的に国税不服審判所は次のような判断を下しました。

  • A社の提出資料、税務署の関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
    1. A社は、毎年、商品券等を食品詰め合わせなどと同様に、H社から中元又は歳暮用品として配送してもらっている。
    2. 本件ビール券の配送先は、該当時期の「ご進物申込票」の控を保管していないため不明であるが、いずれも請求人の取引先の関係者であった。
    3. 「ご進物申込票」の控の「品名」欄には、「全国共通商品券」「びんビール」「缶ビール」「海苔」「せっけん」「焼酎」等の記載があり、また、「びんビール」等は、いずれも請求人の取引先の関係者に、5枚ないし6枚を1セットとして配送されている。
    4. 同社で保管している最も古い平成13年6月25日申込み分の「ご進物申込票」の「びんビール」等は、いずれも請求人の取引先の関係者に、5枚ないし6枚を1セットとして配送されている。
    5. H社のビール券に係る荷具配送料は全国一律410円である。
    6. 本件ビール券の購入時のH社の各請求書の「お買上げ代表品名」欄には、「ビール券」「ビールギフト券」「缶ビール券」「せっけん」「海苔」「焼酎」「荷具配送料」等の記載があり、荷具配送料(410円)の数量は「ビール券」等の数量から計算される配送件数に一致する。
  • 使途秘匿金の支出とは、金銭の支出のうち、相当の理由がなくその相手方の氏名等が帳簿書類に記載されていないものとされているところ、「相当の理由」があるかどうかは法令上明らかにされていないので、措置法第62条の趣旨及び社会通念に照らして判断することになる。
  • 措置法第62条の趣旨は、企業が相手先を秘匿するような支出は、違法ないし不当な支出につながりやすく、それがひいては公正な取引を阻害することにもなるので、そのような支出を極力抑制することにあると解される。
  • 本件のように、支出の時期、金額の多寡等からみて相当の支出であると認められる金品の贈答については、公正な取引を阻害することにつながるものではなく、相手方の住所・氏名まで一々帳簿書類に記載しないのが通例であると認められるから、その相手方の氏名等が帳簿書類に記載されていないことに「相当の理由」があるものと解される。
  • 本件についてみると、①本件ビール券は、H社を通じて通常の中元又は歳暮時期に配送されたと認められること、②本件ビール券の配送先は、平成13年6月25日申込み分の「ご進物申込票」及び最新の「ご進物申込票」の控に記載されたビール券の送付先がいずれも請求人の取引先の関係者であること、及び③各配送先への配送枚数からみて、本件ビール券は中元又は歳暮用品として金額的に相当であると認められることに照らしてみれば、本件ビール券の配送先については、これを帳簿書類に記載しないのが通例であると認められる。
  • 従って、本件ビール券の引渡しの相手方の氏名等を帳簿書類に記載していないことに「相当の理由」があるから、その相手方の氏名等を帳簿書類に記載しなかったことが秘匿するためであったか否かを判断するまでもなく、その引渡しは使途秘匿金の支出には当たらないというべきである。

 

いかがでしょうか。

本来であれば引き渡した相手先を帳簿等に記載することが望ましいのは間違いありませんが、その事実を裏付ける書類等が保存されていればそれらを代用することができるということを審判所は判断しています。
どのような資料をもってしても相手先が全くわからないもの、説明ができないものは「使途秘匿金」と言わざるを得ませんのでくれぐれもご注意ください。

今後のご参考になれば幸いです。

税理士法人レガート 税理士 服部誠

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