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「不動産の贈与時期についての争い」
2015.10.16
税理士法人レガートの“税務調査ブログ”。(Vol.102)
■「不動産の贈与時期についての争い」
今年からの相続税の増税に伴いまして、「生前贈与」が注目されるようになりましたが、今回は相続対策を目的とした「不動産の贈与」について、納税者と税務署が争いとなった事案がありますのでご紹介いたします。(平成9年1月29日裁決)
事案の内容は次の通りです。
○昭和60年3月に父と子の間で不動産の贈与契約書を公正証書で作成。しかし、贈与税の申告は敢えて行わなかった。
○平成5年12月に所有権移転登記を行う。
○税務署は平成5年に贈与が行われたものとして贈与税を決定処分。
○納税者はこれを不服として審査請求を行った。
納税者の主張は次の通りです。
○贈与の方法には「書面による贈与」と「書面によらない贈与」がある。
○本件は、昭和60年に公正証書で贈与契約書を作成し、両者は贈与の意思の合意をしている。
○つまり、贈与は公正証書を作成した昭和60年に実行されている。
○所有権移転登記をしなくても、贈与契約書を作成しておけば贈与があったことを証明することができると、ある公認会計士のセミナーで聞いた。
○平成5年の時点では既に8年経過しており、贈与税に関しては時効である。
これに対して国政不服審判所の判断は次の通りでした。
○請求人(納税者)は、「贈与時期は本件不動産に係る所有権の移転登記がされた日ではなく、公正証書が作成された日である」旨主張している。
○しかし、贈与税課税の除斥期間が経過するまで所有権の移転登記がされていない。
○所有権移転登記ができなかった合理的な理由が説明されていない。
○公正証書を作成した目的が租税回避以外に想定できない。
○実際には公正証書の記載内容と異なる行為が行われている。
○当該公正証書は実態を伴わない形式的な文書と認めるのが相当であり、これにより贈与が成立したとは認められない。
そして、国税不服審判所は、「贈与の成立した日は公正証書による贈与契約書作成の日でなく、所有権移転登記が行われた日と認めるのが相当である。」という判断をくだしました。
その後、納税者は、地方裁判所・高等裁判所・最高裁判所まで争いましたが、すべて敗訴し贈与税額等が確定しました。
ちなみに、平成5年当時の贈与税の基礎控除額は60万円、贈与税の最高税率は70%だったため、納税者が納めた贈与税額等は以下の通りでした。
●贈与した物件の平成5年時の評価額:1億7,238万円
●贈与税の本税:1億935万円
●無申告加算税:1,640万円
皆様にお伝えしたいのは、不動産の贈与に関しては「所有権移転登記まで行って贈与完了」ということです。税務調査の現場でも、最も問題となるのは「贈与の事実」の有無です。
贈与契約書を作っただけで贈与完了と思い込むのは危険です。贈与契約書の内容に沿って必ず贈与の「実行」まで完了させるよう心がけましょう。
今後のご参考になれば幸いです。
(つづく)
今回もお読みいただきありがとうございました。
税理士法人レガート 税理士 服部誠
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